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2016年の映画をふりかえる。

 日本の多くの場所では、2017年を迎えられたようでなによりである。

 どうも、私の属している業界では(私だけなのかもしれないが)1月に年が更新されるという感覚が薄い。まだ、2016年があと3カ月くらいあるような感じがする。それでもまあ、2017年になったので、メモ程度に、2016年のことを少しふり返っておく。

 とりあえず、2016年に観た映画の話。

2016年に観た映画

 1月 Documentary of HKT48

 4月 劇場版 響け!ユーフォニアム(5月~6月にかけて複数回)

 7月 シン・ゴジラ

 8月 君の名は。(9月~10月にかけて複数回)

 9月 聲の形

 11月 この世界の片隅に

 12月 ポッピンQ

 おそろしく偏ったもので、しかも、実写が2本しかない。ただ、複数回観た作品があるので、映画館に行った回数は昨年より増えた。たぶん15回くらいは足を運んだので、昨年の倍くらいにはなっただろうか。

 HKTの映画は、よいアイドルムービーだった。

 ストーリー性が薄くて、みせ方が専業監督に比べて淡白だという批判もあるようだ。しかし、私には素材が充分に吟味されていて、過不足ないと感じられた。なにより説明し過ぎず、ある程度は受け手に解釈を委ねるように意図された作品とみた。

 48グループのアイドルについて詳しく知らない人(一見さん、初見勢)には、そのガイダンスとして観られるように工夫されていた。界隈の人たちは、それぞれの推しが、その時々にどういうリアクションをしたのか知りたいという興味を満たしただろう。

 その意味で、アイドルの登場する映画としては貴重な、多くの人に開かれた映画になったとみている。もっと観られてほしい。

 

 大きくヒットしたタイトルについては、すでに多くの人が語っているので、ここには書かない。京アニ作品に少しふれよう。

 ユーフォの劇場版は、TVシリーズ2期の非常に高いクオリティを準備した点が最も大きな成果だろう。内容自体はダイジェスト版だったが、劇場版制作のためにあらためて多くの人的リソースを費やすことを許し、ゆえに、原作テクストの再解釈・再検討を行う時間が持たれた。これが、2期によい影響を与えたことは、キャストやスタッフのコメントからもうかがえる。

 聲の形では、早見沙織が声優という仕事の枠を考えさせた。全編を通して、不明瞭な、言語音としては不完全な音(と、あえて述べる)に感情をのせる。そういう演技を、アニメーションの表現、声の演技として求めてよいか考えさせた。これまでも声優は、画にあわせた息の演技など言語音以外の演技が求められてきた。しかし、今回はさらにその領域を広げたもののように感じられた。

 

 さて、セリフや声の演技、という点に注目すれば、昨年に引き続き「生っぽさ」への指向が強くなっている。「シン・ゴジラ」ではセリフの速度について細かいディレクションが行われ、官僚らしい語り口を強調した。声の演技では、もともと生っぽさを求めたユーフォは勿論だが、今年は「この世界の片隅に」でカムバックした、能年玲奈改メ、のんがわれわれに届けた憑依芸が非常に強い印象を残した。

 ともあれ「シン・ゴジラ」と「君の名は。」のヒットに引っ張られるようにして、2016年下半期のアニメーション・特撮は例年にない豊作であった。このような活況が、2017年も続けばよいと願っている。