もうだいぶ時間が経ってしまったけれど、共同通信杯のふりかえりを。
共同通信杯のオウケンムーンは遊びを残していたという印象だ。最後は首高な感じでまだ余裕がある印象だ。
新潟でデビューしたときは少し不器用なのかなと思ったが、新潟の2戦目を圧勝して、年明けの中山小回りもこなした。一戦ごとにレースがうまくなり、精神的な成長が目にみえてわかるのもいい。急坂をあがったところでも脚色がおとろえる様子もなく、パワーも申し分ない。
この馬が、ダービー馬になればいいと思った。
北村宏司は優れたジョッキーである。派手なジョッキーではないけれど、人気の馬はきちんと持ってくる。穴馬も持ってくる。一戦一戦大事に乗ってくれる、納得度の高いジョッキーである。(騎手の技量をはかるとき、勝率や連対率、回収率はわかりやすい指標だけれども、なによりも馬の力を出し切った、勝負をしてくれたということが伝わる説得力のあるレースをしてほしいと思う。北村宏司は、わたしにとってそういう納得をさせてくれる騎手のひとりだ。)
しかし、北村宏司は技量と関係なく、有力馬をおろされてしまうジョッキーである。スピルバーグもキタサンブラックも、フェイムゲームも彼の馬だった。怪我があったり海外遠征があったりとタイミングが悪いこともあった。そんなことがくり返されて、気がつけば派手な有力ジョッキーに乗り替わっている。
そういう北村宏司に、チャンスをあたえてほしいと思った。
父・オウケンブルースリの血は、ダービーへの思いがつまったものだ。
府中専用機などと揶揄されながらも、フジキセキの齊藤オーナーと角田晃一に忘れものを返したジャングルポケットの血。さらにさかのぼれば、そこにトニービンがいる。トニービンはウイニングチケットも出して、柴田政人の悲願をかなえた。ダービーへの思いをことごとく成就させてきた血統なのだ。
オウケンムーンは、廃用の危機にある父を救う最後の光なのかもしれない。2017年は1頭しか種付けをしなかったという。GIを勝った功労馬であるから処分されることはなかろうが、乗馬として供用されることになれば去勢されてしまうことになる。そうなれば二度とその血をつなぐことはできない。だから思う。
走れ、オウケンムーン。
そして、ダービーの栄冠を戴くのだ。