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海パン写真家が引き出す、アイドルの真実

 HKT48の冠番組『トンコツ魔法少女学院』8月27日深夜放送分を観た。

 

 毎回、ゲストを「先生」として迎え、見習い魔法少女であるアイドルたちが、芸能界で生き抜くためのさまざまなスキルを獲得していく、というのがコンセプトだ。そして今回は「海パンカメラマン」でおなじみの野澤亘伸が登場。(オファーされたひとつの理由は、指原と同じ太田プロのタレントだからなのだろうけれど。)

 内容自体は、いつもの週と同じようにゲストとHKTメンバーが絡んで、わりゃくちゃするもので、ほかの週と特別変わったところはないのだけれども、それでも、グラビア写真を多く手がけるフォトグラファーが相手なので、普段と違うメンバーの表情が切りとられていく様がみられて、ファンとしてはそれだけで満足できるものだった。

 それだけなら、いちいちエントリすることはない。書き残しておきたいのは、野澤氏に対して多田愛佳が投げた質問から生まれた、一連のやりとりである。

 多田「グラビアのカメラマンさんって、言っちゃ悪いと思うんですけど、ちょっとエロく感じるんですよ。なので(註:被写体の)女の子をみて、ムラムラしたりしないんですか。」

一同「(笑)」

野澤「いやぁ……ムラムラしますよ。しないといけない、いや、ムラムラだけ聞くとちょっと問題ですけど、ムラムラっていうよりは、ただその子のことをひたすら好きになろうと思って撮るんですよ。これは、どのグラビアの人もそうだと思うんですけど、あぁなんてこの子は素敵なんだ、って思って撮るんですよ。」

指原「ということは、谷にもムラムラしたってことでいいですか?」(註:野澤は、この番組の収録以前に、谷真理佳のグラビア撮影をしていた。谷は普段、面白キャラで売っており、ルックス面には注目されない。)

野澤「そうです。」

谷 「そうなんですか! ムラムラしました、私に!?」

 この一連のやりとりをみたときに、日本のアイドルは次の段階をむかえていたのだと思った。私の認識が足りなかったのかもしれないが、2010年代になっても、日本のアイドルは性的に無垢であること、男性の視線を内面化しないことを求められているのだと考えていた。彼女らに性的なアピールが許されるのは、無意識にする場合だけであり、それ以外の場合は、男性が外部からふるまいの型を与えるのだと認識していた。

 しかし、考えてみれば48グループ周りでは、以前から「釣り」といういわれ方で、男性ファンの視線を、アイドルたちが意識してふるまっていることが明示されてきた。だから、ファンとアイドルとの間には、すでに共犯関係が成立していたといえる。

 それでも今回、テレビ番組の中で、多田や谷、すなわちアイドル本人の口から〈私にムラムラしたのか、私のことを欲望したのか〉という言葉が、詰問ではないかたちで、男性たちの視線を「代表」する存在であるフォトグラファーに対して投げられたこと、そしてそれが電波に乗ったことは、日本のアイドル史に記されるべき瞬間だと思う。フェミニストジェンダー批評の人たちは、ものすごく怖い目をして怒るだろうけれどね。