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一勝より一生、総取りより狙いうち(クラシック前哨戦の総括)

 スプリングS毎日杯がおわり、桜花賞皐月賞へ向けてのトライアルは終了した。2歳から活躍してきた馬たちは、一部に誤算はあったものの緒戦をおおむね順調にパスした。中心になるであろう馬たちの故障も、いまのところ少ないのがよいことで、ダノンプレミアム、ラッキーライラックも存在感を示した。いよいよ春本番といったところである。

 他方で、近年は2歳から3歳春にかけての重賞番組が充実したことによって、ステップが多様化してきた。そのため、クラシック出走が可能な程度の賞金を獲得したら、本番との時間が少し開いても、無理にトライアルを使うことはしないと決める陣営がふえた。外厩システムの発展がそれを可能にするのだろう。クラブ馬主の増加も「使い分け」を促しているのかもしれない。

 今シーズンも、プリモシーンがフェアリーSから、アーモンドアイがシンザン記念からそれぞれ桜花賞へ直行。ジェネラーレウーノも京成杯から皐月賞へ直行。以前ならば、12月や1月のレースから直行することを陣営が明らかにすると、ひと騒ぎ起こるものだったが(そういう使い方は、藤澤和雄厩舎の代名詞みたいなものだった)最近は、オプションのひとつとして受け入れられつつある。

 誰もがクラシック出走に向けて、若駒たちに大きな負担をかけていることはわかっていた。ただ、競走馬としての価値のほとんどがクラシック制覇、ダービー制覇だといわれれば、それを目指すしかなかった。

 

 競走馬のキャリアに対する価値観は多様化している。クラシック路線にのったならば、当然のように三冠を目指すことが至上であり、皐月賞に全力、ダービーも全力。菊花賞のことはダービーが終わってから考えるというような雰囲気があった。

 けれども、今年は毎日杯を勝ったブラストワンピースが皐月賞をパスしてダービーへ直行。2着のギベオンはNHKマイルCへ。過去にも皐月賞をスキップした馬はいて、ディープスカイダノンシャンティNHKマイルCへ、キズナ京都新聞杯をはさんでダービーへと進んで結果を残したこともあり、藤澤師以降の新しい世代の調教師たちが、これまでの価値にとらわれないレース選択をしてさまざまなあり方が認められるようになった。

 藤澤師のいう「一勝より一生」のことばは、広く共有されつつある。

 

 さて、皐月賞は最終登録の時点でフルゲートにならないことが決まった。

 ダノンプレミアムがこれまでにみせてきた圧倒的なパフォーマンスのせいか、NHKマイルCやダービーを狙いうつことにした陣営もあるのだろう。

 ただ、そのことがクラシック一冠目の価値を下げるかといえば、それは違う。近年であればドゥラメンテが勝った2015年は15頭立てだったが、リアルスティールキタサンブラックサトノクラウンクラリティスカイなどが出走しており、その後まで活躍する馬たちが顔を出していた。

 ただ、どれほど価値観が多様になったとはいえ、その可能性があるならば、三冠馬の夢をみたいものだ。その存在は競馬界に核を作り、とりまく人々を活性化するものだ。ダノンプレミアムにかかる期待は大きい。