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有馬記念は別れの隠喩である

 ダービーと並ぶ、日本競馬界最大の祭りである有馬記念。しかし、ダービーの祝祭性とくらべると、有馬記念は少し寂しい。年の暮れに行われることと、これを最後に引退する馬も多いことが、なんとなく物悲しい気分をつくるのかもしれない。

 

 ダービーは、よく集まったという感じがある。

 有馬記念は、これでもう別れてしまうという感じがする。

 

 有馬記念は、人の情念が渦巻く競走である。どうしても最後に勝ちたいとか、もっと大きなお金が欲しいとか、あらゆる情念が煮詰まって、あの狭小とした中山競馬場に凝縮されている。どす黒い、けれども切実な願いがある。

 だから、ゴールの瞬間はなんともいえないカタルシスがある。それらの情念がすべてはじけて昇華するような感覚。成仏とか昇天とか、そういう弔いにも似た感覚。一年間のこだわりとか、わだかまりとか、そういうものが一切、師走の昏い空に融けてゆくような。

 思えば、そういう競馬と競走馬の貴さ、神聖さで人々の魂を浄化してきたのが有馬記念なのかもしれない。トウショウボーイテンポイントの2年越しの闘い、最強を証明したシンボリルドルフの連覇、オグリキャップの奇跡や、トウカイテイオーの意地、スペシャルウイークとグラスワンダーの激闘。

 

 そういった伝説に匹敵するだけのメンバーが、今年は揃った。

 キングカメハメハディープインパクトが星になった今年をしめくくるのは誰だ。その偉大な二頭への未練を断ち切るのは誰だ。

 そんなことを考えながら、当日まで予想をつづけようと思う。