ダービーと有馬記念は特別なレースだ。毎年、競馬の周りにいるみんなが願いをかける競走だと思う。ダービーが前年6月の新馬戦からの一年間を振り返って自分の願いと再び向き合うものならば、有馬記念は金杯からの自分を振り返って願いおさめをするものであろう。だからここでも懲りずに予想ではなく願望を語ろう。ダービーと同じことをここに書く。
◎ステラヴェローチェ
競馬とはすなわち品種改良を重ねた畜産農業の結果である。一度失われた血は取り戻せない。淘汰される運命なのだといわれればそれまでなのだが、本来はもっと大きな実りをもたらすはずであるのに、人間の不明によってその潜在力を生かしきれないで細くなってしまった血もある。日本でのナシュワンからバゴにつながる血もそうなりつつある。バゴに残された時間は少ない。ナシュワンのために、バゴのために、ステラヴェローチェは勝ってその血をつながなければならない。彼は使命を背負って走っているのだ。
ステラヴェローチェは、種牡馬にならなければならないんだ。
ステラヴェローチェの走りは、選ばなかった過去たちへ静かに捧ぐ讃美歌である。
未来は約束されていない。けれども、この有馬記念が彼にとっての運命の舞台ならば、きっと星はきらめくだろう。その舞台のチケットを握りしめて応援することにしよう。