世代交代は望みのとおりに起こるわけではない。むしろ真正面から望まれて成功することは稀で、ほとんどの場合は水面下で進行して、いつのまにか交代させられているのである。われわれの目に映るときにはすでに終わっていて、あとからそこが時機だったのだと気づくものである。
競馬の世界でもそう、まだと思っているときには既にそのときがきている。今年はルメール騎手のJRA重賞勝利が遅かったことが話題になり、彼自身の不調をいうような声もきかれたが、それよりもっと健全な考え方があるだろう。
素朴に他の騎手がうまくなったということだ。
もともとうまい騎手は多くいて、その技量が注目されるか、知る人ぞ知るものであるかの違いである。今年の前半戦はそうした「うまいのは知っていたけど、ちょっと地味」だった騎手や「伸びてきたところをみて、師匠がさらに後押し」など、騎手をしっかりみる(そして、競馬がうまくない騎手を見限る)時期だったこともあって、騎手の力関係や特徴をみなおすことになった。そういう視点で今年のダービーをみれば、どうしても無視できない一頭がいる。
アスクワイルドモアである。ビクターモアではない。
岩田望来騎手は、現在のところ全国リーディング2位。所属厩舎の後押しもあって初年度から順調に勝ち星をのばし、今年は待望の初重賞勝利を遂げた。なかなか手の届かなかった重賞勝利だったが、ひとつ勝てば勢いも出て、今回騎乗するアスクワイルドモアと京都新聞杯を勝って重賞2勝目。ここへやってくることになった。
ダービーともなれば、百戦錬磨のトップジョッキーが多数参戦。一筋縄ではいかないだろうが、やはりGIにおいては実力に加えて本番に向けての上昇力もまた鍵になる。注目の少ない分だけ思い切って乗れることもあり、100%をこえる力を馬が出してくれるということもあるだろう。今回はそんな若き騎手の伸びてゆく姿にも期待してみる。
◎アスクワイルドモア
◯プラダリア
▲イクイノックス
相手は青葉賞快勝のプラダリア、実力十分のイクイノックスで。こちらは大舞台経験豊富な鞍上で、苦しい状況をその高い技量で打開することのできる騎手。馬が強いのは当然だが、最後の一押しをするのは人だろう。
馬連・ワイドBOX 1,6,18
3連複 1-6,18-3,12,13,15
新しい時代の始まりを見届けようと思います。