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好機にひるむな(第165回天皇賞のこと)

あと少しで何事かが成就するというときになって、人はなぜか臆病になることがある。一度こえてしまえば大したことのない重圧だが、それまでにささやかでも成功の体験がないと、そこで立ちすくんでしまうのだ。

そうして好機を前にして怯み、手に入れてしかるべきものを逃していく姿を何度もみた。過剰な自意識やいらない遠慮、優等生の真面目さが裏目に出て無難な選択をしてしまうなど、他者との争い、その関係性のなかで本来の潜在力を発揮できないまま終わっていく者もあった。

どうすればよかったのだろうか。どうすれば自分の力を発揮することだけに没頭することができたのだろうか。訓練をくりかえすことでもたらされる経験と自信か。実践(実戦)を多く経験することで慣れればよかったのか。人間も、馬も、一つのきっかけでステージがあがるが、そのきっかけをつかむのが難しい。


今回の天皇賞のメンバーで、すでに高いステージにあがっているのは2頭だろう。

いうまでもなく、タイトルホルダーとディープボンドだ。一方は菊花賞を勝ち、もう一方はGIでの好走を続けている。トライアルでもその力をみせて、本番の舞台へやってきた。一般的な考え方にそって予想するなら、この2頭の力比べでおわる。けれどもそれでいいのか。

一見、堅牢にみえる城であっても、人が出入りをするからにはどこかに穴があるものである。どんなに強い馬であっても不思議の負けの一度や二度はあるものである。ならば今回、実力者たる2頭の足もとをすくう者は誰なのか。あるいはそれでも、盤石の構えで受けとめる強さがあるのか考えてみた。


◎タイトルホルダー

前走の日経賞は仕上がり途上でありながら、最後に抜かせない根性をみせて実力者たるところをみせた。充実の季節を迎えているとみて、動かない中心であると考えた。

◯タガノディアマンテ

怖いのは、普段笑っているやつが闘志を出して向かってくるときである。ここと決めたら絶対に譲らない幸英明。誰よりもレースに乗る騎手。タイトルホルダーの後ろで上手に収まれば、その引き出しからオルフェーヴルの血を覚醒させるびっくり箱が出てくる可能性はある。

▲テーオーロイヤル

斤量を云々する者があるが、みんな同じだけ背負うのである。58kgで勝ってる馬しか信用できないというならば、ディープボンドとハヤヤッコだけ買えばいいのだ。前走もほとんどの馬が54kgないし55kgで走っているわけだから、極端に恵まれたということもない。


2頭が前をすいすい進んで、後ろの馬群はじんわり。2周目3コーナーあたりから急に速くなるならディープボンドには厳しい展開。かといって3番手から自力でつかまえるのも負担が大きくなりそうで、馬の実力は認めるが下げた。メンバー構成や枠順も力のうちである。

ともあれ、すべての人馬が実力を出し切り、正当に評価されることを望むばかりである。天皇賞の舞台はそれに相応しいと思うし、それを結果が証明していると私は思っている。特に馬券的にも心情的にも、テーオーロイヤルが力を出して実力の証明をしてくれればと願うばかりである。